Existence *

…―――

日曜日の夜。

家に冬服を取りに帰ると言った美咲と車で向かう。


「えっ、何?工事してんの?」


美咲がそう言って窓から覗き込むようにこの先を見つめた。

通れないように看板が立てられていて、この先へ行くことも出来なかった。


「仕方ねぇな。向こうの空き地に停めてくっから美咲ここで降りろ。後で行く」

「うーん…分かった」


渋々頷いた美咲は車から降り、足を進めていく。

その美咲の背後から視線を外し俺は少し離れた空地へ向かい車を停めた。


停めてすぐに美咲の家へと向かう。


だけど美咲の家に近づくにつれて誰かの声が聞こえて来る。

だけどその声は美咲の声で、冷静さとはかけ離れた声。


「…――ないんだよ!ママが亡くなったからって今更父親気取りしないでよ!」


美咲の声が反響した。

父親気取り?

何があった?


近づくと美咲は誰かと話している。

その前には男の人が居て。

だけど男の人が何を言ってるのかは全く聞こえなかった。


「だから!…だから言ってんでしょ?帰ってって…。私は父親なんていないって言ってんじゃん。むしろ、アンタを父親だなんて思いたくない!」


…美咲の父親?

つか、今更なんでここに?

美咲に会いに?


「アンタがっ、アンタがママを殺したんだよ!」


美咲の声が反響する。

美咲の声で分かる。

美咲の声が必死で震えているのが。

だから俺の足が咄嗟に進んで、


「悪かった。ホントに、ホントにすまなかった。せめて線香だけで――…」

「だから帰ってって言ってんじゃん!ママに触れないでよ!私のママ――…」

「…美咲!」


もう、やめろって。

こんな場所で。


美咲の声を遮って、俺は美咲の腕を掴む。

その美咲の腕が微かに震えていたのが分かった。


表情を崩し、唇を噛みしめ、今にも泣きそうな瞳を揺るがす美咲から俺は男の人に視線を送った。