Existence *

11月下旬。

繁華街とは真逆のオフィス街。

高層ビルが立ち並ぶ一角。


昼の仕事が午前で終わった後、次の仕事に提出するものを持って行った帰りだった。

前方から歩いて来るリアを見つけてしまった。

この場から早く立ち去ろうと思う事すらも出来なかった。


俺より先にリアの視線が俺に向いていたからだった。

まさか、ここで出会うとは思ってもみなかった。


繁華街では派手なリアもこのオフィス街では多少落ち着いている。

だけど、周りの視線を引き付けるオーラだけは全く変わっていなかった。

リアと会うのは何か月振りだろう。


「…久しぶり」


俺を見た瞬間、リアは口角を上げて微笑んだ。


「あぁ」

「珍しいわね、こんな所にいるなんて」

「お前こそ」

「私は仕事よ」

「ちゃんと働いてんだ」

「親のスネでもかじってるって思ってたわけ?ちゃんと働いてるわよ」

「まぁリアはお姫様だからな」


そう言ったリアは嘲笑的に笑みを漏らした。


「そんなお嬢様を楓は無視するのね。流星から何も聞いてないわけ?」

「リアが来たって言うのは聞いた」

「それだけ?流星も使えないわ、ほんとに」

「……」


リアは顔を顰めてため息を吐き出す。

と言うか、ため息を吐きたいのは俺の方。

リアと話すことなど何もない。


「電話番号も変えてほんとに終わりにするってこと?」

「終わりも何も俺とリアは何もねぇだろ。俺はもう夜から外れてる」

「でも、誘われてるんでしょ?そんな声を聞くんだよね」

「周りの声聞いても意味ねぇだろ」

「私はただ、あの場所に楓が居てほしいだけ。ねぇ、辞めた理由って何?」

「なんで?」

「聞いてないから聞きたいだけよ」

「入った時から30になったら絶対やめるって決めてたから」

「それがほんとの理由かしら…」

「どう言うこと?」


リアは小さくため息を吐き、外した視線をもう一度俺に向けた。


「ねぇ、楓さ、…彼女いるってホントなの?」


そう言ったリアの表情が一瞬にして変わったのが分かった。

無表情っていいのだろうか。

俺に向ける冷たい視線。


…そか。

リアの耳にも入ってんのか。