Existence *

「我慢してるのそっちじゃん」


背中に回していた美咲の手が俺の頬を撫ぜる。


「どゆこと?なにが?」

「何がって、」


言葉を詰まらせ、美咲は笑う。

あー…、そか。

なるほど。


「あー…、ヤるのを我慢してるってこと?我慢してるって言えば嘘になる」

「ほら」


美咲が流産してから一度も抱いてはいなかった。

と言うか、それ以降しばらくはしたいと思う気もなかった。


「私の身体の事心配してる?」

「そんな当たり前の事、聞くなよ」

「私も翔の身体のこと心配してる」

「薬飲んでねぇし、心配される事なんもねぇっつーの。ほんとそういうところ昔っから変わんねぇな」

「私も大丈夫」


頬を緩めた美咲にキスをする。

もう一度重ね合わせた唇から熱を帯び、俺は体勢を変え美咲に覆いかぶさりキスを繰り返す。

次第に美咲の腕が俺の首に回り必然的に身体を重ね合す。


美咲から漏れて来る声に――…


「…なぁ、美咲?」

「うん?」


動きと唇を離し、俺は美咲は見下ろす。


「俺から離れないって約束して」

「どういうこと?なんでそんなこと今?」

「あー…なに?ヤってる最中に言うなってか、」

「そうじゃなくて」


呟く美咲にクスリと笑う。


「俺はただ美咲しかいないって思っただけ」

「そんな事、私だってそうだよ。翔しかいない」

「そうだなぁー…、美咲を気持ちよくさせるのは俺しか居ないもんな」

「もー…、ほんと何言ってんの?」


薄っすら微笑む美咲に微笑み返し、またキスを繰り返す。

なぜか、分からないが嫌な予感がした。

その嫌な予感が何かと言われれば分からないが、美咲が俺から離れるんじゃないかってか言う変な予感。

ただ、それは今日だけじゃなく、他の女に会ったからだろうか。


――…彼女居るの?

――…噂、ね。


めんどくさい噂がなんもなきゃいいけど。