Existence *

17時になる頃、俺は蒼真さんの会社に訪れる。


「どしたん?お前、また引っ越しすんの?」


奥の部屋に進んで、ソファーに腰を下ろしたとき、目の前の蒼真さんが微笑みながら聞いてきた。


「いや、引っ越しではねぇんだけど」


そう言った時、従業員が目の前に珈琲を置き、俺は軽く会釈し、そのコップを手に持ち口に含む。


「会社でも興すん?」

「それじゃなくて、ここ売却したらいくらになる?」


ポケットからスマホを取り出し、美咲の家の住所と写真を蒼真さんに見せる。


「んー…、誰の家?今まで隠してきた愛人かよ」

「いねぇわ、そんな奴」


クスクス笑う蒼真さんにため息交じりに吐き出す。


「お前は分かんねぇからなぁー…で、誰?」

「美咲の家」

「あー…本物のほうの?」

「本物しか居ねぇわ」

「なんで売却すんだよ、ここ売却すんの勿体ねぇぞ」


蒼真さんは俺のスマホの画面を見つめ、スクロースしながら家の外見とかを見ていく。


「やっぱそうっすよね」

「ここら辺、立地いいから住む人も探してっし。むしろここら辺の土地が高い」

「そか」

「なんで?マンションで一緒に住むのかよ」

「うーん…、行ったり来たりなんで、まだある家賃が勿体ねぇっつーから」


俺のスマホを返してきた蒼真さんはパソコンを広げ、何かを打ち込んでいく。


「この先の事を考えてんのだったら、そんなもんお前が払えよ。あとどんくらい?」

「一千万と少しっつってた」

「それだったら払う方がいい。ここの土地売ったら多分のちのち後悔すると思うけど」

「そーっすよねぇ…。俺も思ってた」

「売ってもさぁ、それほどプラスにはなんねぇけど。残りの金払って売った金とで、ざっと600くらい」

「え、そんなもん?」

「あぁ」


蒼真さんはパソコンを見ながら呟き、俺に視線を向けた。


「え?立地いいからもっと高く売れるんじゃねぇの?」

「まぁ、築年数とかそんな感じでな」

「…払うか、」

「お前なら残りの分、一括で払えんだろうよ」

「まぁ…」

「何かお悩みでも?」


クスクス笑う蒼真さんは、ソファーに背を付けて、俺を見つめた。