Existence *

「…翔?」


不意に聞こえた声に視線を上げる。

目の前に目を赤くした美咲が立っていて、美咲は顔を上げた俺の頬にそっと手を添えた。


「うん?」

「大丈夫?」

「なにが?」

「ごめん、話し聞いちゃった」

「ん、」

「まさか喜田さんと…驚いた」

「俺も」

「大丈夫?…泣いていいよ」


美咲の震えた声で余計に涙が零れ落ちそうだった。

頬に手を添えて、さっき零れ落ちた涙の痕を拭うように美咲が指を拭う。


「美咲に言われるとはな」


フッと思わず鼻で笑ってしまった。

悲しそうに微笑む美咲の頬に手を伸ばして滑らせ、俺は立ち上がって美咲の頭を撫ぜた。


「…もうみんな帰るって」

「わかった」


ここに来た時にはもう既にほとんどの参列者は帰っていて、残ったのが流星達だけだった。

美咲と一緒にその場に向かうと、流星とか蓮斗達が数人いる所で、美咲は深く頭を下げた。


「今日は本当にありがとうございました。初めてお会いになる方もいるのに、みっともない姿を沢山見せてしまって、すみませんでした」


深々と頭を下げる美咲の背中を擦ると、立ち上がった蓮斗が美咲の肩にそっと触れた。


「そんな事、気にしなくていいから。ゆっくりも出来ないだろうけど、身体休めて、翔に美味いもん食わせてもらいな」

「そうそう、俺らの事は気にしなくていいから。空気だと思っといて」


その流星の言葉に、


「うっせぇ空気だなぁ」


思わず呟いた声に美咲は微かに笑みを漏らした。


「なぁ、実香子は?」


周りを見渡して実香子の姿を確認するが居なく、流星に視線を送る。


「仕事あるからって帰った」

「そか。…美咲?また実香子に会わせる。5年前お母さんの担当看護師だった。美咲には会ってほしい」

「…うん。ありがとう」


諒也も葵ちゃんも、みんなが帰った後、俺と美咲も帰宅し、その次の日から片付けに追われていた。


「…翔くん、美咲へ」


片付けの最中、美咲がポツリと呟く。

視線を向けると手に封筒が握られている。


「…手紙?」

「そう…みたい」


そう言って美咲は封筒の中から便箋を取り出して、そっと開けた――…