Existence *

火葬場から葬儀場へもう一度戻ってきた時、


「あの…」


その声で俺は振り返る。

振り返る先には50代後半くらいだろうか。

女の人が俺をジッと見つめてた。


「…はい」

「あの、もしかして翔くん?…芹沢さんですよね?」


俺の名前を呼んでくる女の人はもちろん知らない。

正直、誰?って感じで会ったことも、ない、はず。


「そう…、ですけど」

「あ、やっぱり…そうだった。翔って呼ばれてたから芹沢さんかなって思って。昔に見た面影があったから」

「昔?…すみません、どなたでしょうか?」

「あ、ごめんない。私は百合香ちゃんの同僚だった喜田(きだ)です」

「…っ、」


思わず俺の目が見開いた。

…お袋の?

え、なんでお袋の同僚の人が、ここに?


「正直、私も驚いてます。ここで翔くんに出会えた事に。今までずっと会いたいと思ってました」

「……」

「百合香ちゃんの葬儀の時は、あなたに話しかけづらかったから」

「…すみません」

「立派になったね。百合香ちゃん、喜んでるよ」


ニコッと笑って、喜田さんは俺の腕をそっと擦った。

もちろん俺は初めて会う人で、この人がお袋の葬儀にいたのも知らない。


誰が居て、誰が来てたのなんかまったく覚えてもいない。

――…と、言うか。


「あの、すみません。なぜ、ここに?」

「あ、そうだよね。私は美恵ちゃんと一緒に働いていたから」

「…え?」

「だから本当に驚いてる。夜のスーパーなんだけどね、百合香ちゃんと働いてた場所からこっちに移転してね、そこで美恵ちゃんと知り合ったの」

「そう、なんですか…」

「ほんと凄い偶然。もしかして翔くんに会わせてくれたのかなって、思ってる」

「……」

「もしかして美咲ちゃんと付き合ってる?そんな雰囲気だったから」

「…はい」

「そっか良かった。美恵さんがお話してくれてたの。凄いいい人で美咲も幸せだって。だからそれが翔くんで良かったって思ってる」

「……」

「百合香ちゃん、喜んでるよ。ほんと、立派で紳士になってるから」


そう、嬉しそうに微笑みながら喜田さんは俺を見上げた。

でも俺は何かが引っかかった。


お袋と同じ職場――…