Existence *

「どんな心配だよ。それに実香子には美咲に会わせねぇとって思ってる。でも今はそんな時間すらねぇわ」

「別にいいよ。もう皆から美咲ちゃんの事、沢山聞いてる」

「沢山って、なに?」


足を進めながら隣に居る実香子にちらっと視線を送る。

その実香子の視線と重なった時、実香子はクスリと笑った。


「美咲ちゃんが物凄く綺麗って言うね」

「また、それ」

「またそれって、何よ。そこ自慢するところでしょ?ほんとに美人だったし」

「…だったし?どゆこと?」

「あー…リリちゃんがね、会った事あるって言ってたからさ。それで病院で葵ちゃんに出くわしたときに写メ見せてもらったの」

「へぇー…、女ってそう言うの好きだな」


思わず俺は苦笑いをしてしまう。


「じゃあ、ほんとに美人さんだった。お母さんに似てるよね、美咲ちゃん」

「そだな」

「私なんか会っちゃうと恥ずかしいから別にいいよ」

「いや、でも実香子は会わせたい。他の奴らは会わせたくねぇけど…」

「もぉ、何よそれ」


クスクス笑う実香子と駐車場まで行き、車に乗り込む。

目の前の病院を見上げて、俺は軽く息を吐き捨てた。


「なぁ、実香子?」

「うん?」

「実香子から見て、お母さんはどんな感じ?もうすぐで二ヶ月になる」

「美咲ちゃんはどんな感じ?」

「あいつも苦しいと思うよ?俺にはそんな言ってこないけど」

「私は医者じゃないからなんとも言えない。でも今まで沢山の患者さん見てきたから言えることだけど、もう長くはないと思う」

「…そっか」

「脈も乱れてる。顔色とか呼吸とか、そう言うのでしか分からないけど」

「ん、」


実香子を送って、帰宅し、その日付が変わる頃に帰ってきた美咲はやっぱりいつも通りで。

だから俺もお母さんの話をすることもなく、その毎日をただただ過ごしてた。