Existence *

「…美咲?」


ソファーに倒れ込む美咲に声を掛け、俺は手に持っていた封筒を美咲に差し出す。

不思議そうに見つめてきた美咲は俺の手から封筒を取り、その中を覗き込んだ瞬間、目を見開いた。


「えっ、何でっ?」


声を上げ、美咲は身体を起す。

そして中から通帳を取り出し、ジッと見つめてた。


「何か引き出せって」

「は?」

「だからその通帳に入ってる金、全部引き出せって」

「え?なんで?」


なんで?

と言われて、生活費にしてなんて言えない。

言ったら美咲はきっと変な勘が働くだろう。


「さぁ…。なんか夜は美咲が居ないから俺に頼んだみたいだけど」

「だから引き出してどうすんの?」

「おいといてって…」

「は?ますます意味分かんない。また戻ってきて、私、何の為に渡しに行ったのか分かんないじゃん」


そら、そうなるわな。

今日、持って行った物がまた手元に戻ってきてんだから。


「つか俺もよくわかんねぇんだよ。でも早くしてって言ってた」


何も知らないようなそぶりで美咲に言い放ち、美咲の持っている通帳に視線を落とす。

その通帳を美咲は浮かない顔で捲っていた。


もう一度、病院行ってくると言った美咲は次の日も、その次の日も、お母さんは何も言わなかったって。

それどころか話すことが困難で、しんどそうって言ってた美咲のほうも心配だった。


あの通帳を受け取った日から俺も何回か病院に足を運ばせた。

美咲が言った通り、話す事が困難どころか呼吸するのもしんどそうで、その姿を傍でじっと見る事しか出来なかった。