Existence *

次の日、美咲はほとんど寝たままで起きては来なかった。

今までの疲れを解消するかのように美咲はずっと寝たままだった。


寝ている美咲を一人にすることが出来ず、俺もその日は家でパソコンを開いて仕事に没頭していた。

丁度昼を過ぎたころ、不意に鳴り出すスマホに視線が向く。

手を止めてスマホを掴み――…


「…はい」


電話に出た俺はテーブルにあったタバコを咥え火を点けた。


「お前、暇?」


電話越しから聞こえる蓮斗の声。

後ろから賑やかな声が聞こえて来る。

その騒がれた周りの声だけでどこに居るのかすぐに分かった。


「暇じゃねぇから行かねぇぞ」

「行かねぇぞって、どこか分かってんのかよ」

「公園だろ」

「あれ?わかった?」

「わかるわ。後ろがうっさい」


ギャーギャー騒いでる声が反響して聞こえて来る。

可愛らしい声と、騒いで叫んでいる声。


「ははっ、そっか。別にお前に頼もうなんて思ってなかったんだけどよ、香恋がうっせーの。翔くんに“もしもし“してって」

「えー…」

「だからしただけ。…あ、ちょっと代わるわ」


そう言って蓮斗が笑いながら何かを話している。

きっと香恋だろう。


「…もしもし、翔くん?」


可愛い声が耳に伝わり思わず俺の頬が緩む。


「うん。香恋、何してんの?」

「んっとね、公園にいる」

「誰と居んの?」

「んーっとねぇ…アキとぉー、タケルとぉー、愛優ちゃんとレンくんっ!」


その香恋の話し方で更に笑いが漏れる。

アキとタケルは呼び捨てかよ。


「良かったな。お兄ちゃんに遊んでもらいな」

「翔くん、来ないの?」

「ごめんな、俺仕事してんの」

「お仕事?」

「うん。また遊ぼうな」

「うーん…、わかった。レンくんに代わる…はい」

「なぁ、マジおもろくね?アキとタケル呼び捨てで呼んでんの、香恋の奴」


ケラケラ笑いながら言う蓮斗に俺も笑いが更に漏れて来る。