Existence *

「飯、何か買ってくるわ。食べてねぇだろ?」


起き上がる美咲に声を掛けると、美咲は慌てた様に、


「あ、ごめん。なんか作る」


そう言って立ち上がろうとする美咲の肩に触れる。


「馬鹿、何もすんな」


阻止するかのように立ち上がる美咲の身体を止め、俺は頬を緩める。

そして俺はその部屋を出て、コンビニへと向かった。


正直、これ以上の言葉を美咲に掛ける事が出来なかった。

出来ないと言うか、なんて言ったらいいのか分からない。


ただ良かったと思うのは、誰にも言っていなかったこと。

…良かった?

なのだろうか…


あー、そか。

美咲のお母さんに言ってんだった。

どうすっかなー…


と悩みながらコンビニでいろんなものを買って帰宅する。

ソファーで蹲るようにして身を縮める美咲に視線を向け俺は一息吐いた。


ちょっとは落ち着いただろうか。

いや、そんな簡単に落ち着けるわけねぇよな。

俺も落ち着くほど余裕ねぇし。


「なんか食いな」


買って来たものをテーブルに置き、美咲に視線を送ると、美咲はゆっくりと首を横に振る。

食べたくないのはわかる。

食べられる状態じゃないのも分かる。

だけど――…


「マジで食えって!じゃねえと、美咲の身体がもたねぇよ」


グッと美咲の腕を引き、無理やり椅子に座らせる。

きっと美咲は今日1日ほぼ食べてはいないだろう。


買って来たものをテーブルに並べていると、フッと美咲の笑った声が微かに聞こえた。


「買いすぎ」


クスクス笑って苦笑いになる美咲に視線を送る。


「何笑ってんだよ」

「なんか…昔を思い出してさ」

「昔?」

「ほら、初めて翔と出会った時にさ、無理やり居酒屋に連れて行かされて、そこで馬鹿みたいに翔が料理頼んでた時の事」


まった、そんな昔の事、思い出して。

確かにあん時もすげぇ頼んだ記憶はある。


うん。そして確かに今日も買い過ぎたかも…