Existence *

美咲が何かを言おうとするが、涙の所為で上手く声が出せないと言ったらいいのだろうか。

小刻みに震える身体を擦って、その手を頭に移動させ、もう一度撫ぜる。


「…いないって…」


暫く経って美咲の小さな声に俺の手が止まる。


「いないって?…なにが?」


正直、何がか分からなかった。

だけど美咲は溢れてくる瞳のまま俺をジッと見つめた。


「…赤ちゃん。…いないって」

「え?」


一瞬何を言ってんのか分からなかった。

そう言った美咲の唇は微かに震えてて、


「流産してた」


そして新たに美咲の瞳に涙が伝った。

苦しそうに息を詰まらせ呼吸する美咲の瞳からあふれ出す涙。

ここ数日、美咲の身体は良くなかったが、まさかこんなことになってるとは思わなかった。


そう思ってるのは俺よりも美咲で、俺に心配かけないようにと平然さを保ってた美咲。


「…美咲?」

「……」


頭を擦っていた手を動かして、美咲の手を握る。


…冷た。

やけに冷たい手が俺に伝わってくる。


「正直…俺もすげぇショックだけど、俺は美咲が居てくれたらそれでいい」

「……」

「次もあるから。けど今は美咲の身体の方が優先。…辛い思いさせてゴメン」


…ごめんな。

ほんと美咲が居てくれるだけでいい。

こうやって一緒に居て、傍で笑ってくれるだけでいい。


未だに溢れてくる涙を俺は指で拭う。

拭っても拭っても溢れてくる涙。

相当辛かったんだろう。

なのに俺は何も知らなくて、何も出来なくてごめんと言う思いしかない。


「…ごめん、ね」

「つか何で俺、謝られてんの?」


フッと笑みを零し、俺は美咲の頭を撫ぜる。


「…期待に応えられなかった」

「そんな事ねぇよ」


むしろ、その期待ってなに?

なんの期待?


美咲の所為でもない。

だから自分が悪いだなんて思わなくていい。


美咲が落ち着くまで傍に居て、俺は一度、シャワーを浴びるため風呂場に向かう。

上がって、速攻また寝室へと向かった。