Existence *

今日一日が物凄くなんだか長くて、物凄く頭が重い一日だった。

帰ってきて、ソファーにどれくらい横になっていたのかも分からない。


「…ただいま」


美咲の声で意識が舞い戻る。

身体を起し、俺が居るソファーに近づいた美咲を俺は抱きしめた。


「おかえり」

「…どうしたの?」


不思議そうに問いかけて来る美咲に、「なんでも」そう言って、ギュッと更に抱きしめる。


「なんかあった?」

「なんで?」

「なんかそんな予感したから」

「なんもないよ。ただ美咲を抱きしめたくなっただけ。体調は?大丈夫?」

「うん」

「良かった」


今日あったことなんて美咲に言えるわけがない。

そんな事、何一つ言える訳がない。


あれから美咲は落ち着いてた。

お母さんの事もそれほど俺には語っては来ないけど、病院には顔を出していた。

ここ数日間、特にこれと言って何もない日を過ごしていたけど…


「…どした?」


帰宅した美咲が脱衣所の洗面台に手をついて俯く姿。

声を掛けると、美咲が顔を上げた瞬間に鏡越しから美咲の顔が目に入る。


戸惑った表情に顔を顰める美咲の表情。


「…うん」


呟く声は小さくて、消えそうな声。

その表情だけで何かあったと思わせる姿。


「何かあった?」


その俺の声で美咲の瞳が少しだけ揺れた。


「…出血してる」

「出血?」

「うん」


それを聞いて一瞬、理解が出来なかった。

なんの?

と思ったのもつかの間。

美咲が無意識にお腹を擦る姿にハッとする。

だから思わず顔を顰めて鏡越しから美咲を見つめた。


「病院は?」

「行ってない」

「行けよ。今から行く?」

「ううん。明日、朝いちに行ってみる」


手を洗ってタオルで拭いた美咲はその場を一旦離れ、ソファーに寝転ぶ。

そして美咲は額に手を当てて目を瞑った。