Existence *

美咲に別にいいって言われたから行かないのはちょっと流石にと思った。

その2日後、俺はお母さんの病院へと向かった。


最近では美咲ばかりに頼ってしまって来ていなかった。

久しぶりに足を運んだと思えばこの報告かよって。


「…お久しぶりです」

「あ、翔くん…」


ベッドに寝ていたお母さんは俺を見た瞬間、優しく笑みを浮かべ、そして身体を少し起す。


「いいですよ、そのままで」


そっと肩に手を当てると、お母さんは軽く首を振った。


「大丈夫。寝てばかりもね、疲れるの」


そう言ってお母さんは頬を緩めた。

わかる、物凄く。

俺も半年間、居たから。


「すみません、美咲ばかりに頼ってしまって、なかなか来てなかったんで」

「いいわよ。私の事は気にしなくて。こちらこそ、ごめんね。忙しいのに…」

「いえ。…体調どうですか?」

「うーん…良いとは言えないけど、美咲見てたら元気になるから。美咲から聞いたよ?」

「あ、…なんかすみません」

「えー…なんで謝るの?嬉しい事じゃない。私は翔くんで良かったって思ってる。あなたのお母さんもきっと喜んでるから」


“ね?“そう付け加えて、お母さんは俺に笑みを向けた。

だけど、その笑みは以前会った時の笑顔じゃないって事くらいわかる。


「大切にします」

「ありがとう。ねぇ、翔くん?」

「はい」

「一つお願い、してもいいかな?」

「なんですか?」


真剣な表情で言ってきたお母さんを察して、俺はパイプ椅子を引っ張り出し、それに腰を下ろす。


「家の事なんだけど…」

「家、ですか?」

「そう。美咲にはこんな事、言えなくて…」

「……」

「この先、あの家がお荷物になると思うの。だから私が居なくなったら、あの家を売却してくれないかな?」

「売却…ですか?」

「美咲はどう考えてるのか分からないけど。私はそのほうがいいと思ってる」

「うーん…」


正直、そんな事、ここで、分かりました。って言える内容でもない。

俺のお袋が亡くなった時は俺が20歳の時に売却した。


そもそもあの周辺は立地もあまり良くはなかったし、不便だった。

でも、美咲の家は――…