Existence *

「あ、そうだ」


冷蔵庫に水を仕舞おうとしている美咲の手を瞬時に止める。


「うん?なに?」


不思議そうに振り返って見つめて来る美咲の横から冷蔵庫の中へと手を伸ばす。


「これさ、ロールケーキ」

「うわっ、これ有名なやつじゃん」


長い箱を取り出して、そこに書かれてある店のロゴ。

それを見た美咲は少し声を上げて俺に視線を送った。


やっぱ、美咲も知ってんのな。


「そうそう、そこの」

「えっ?なに?もしかして並んだの?」


驚いた表情で見て来る美咲に苦笑いが漏れる。

ごめん。

さすがに美咲の為でも3時間とか並べねぇわ。


「…んな訳ねぇじゃん。聞く話によると2~3時間待ちとか言ってんのに」

「あぁ…うん、そうだね。でもなんで?」

「久しぶりに会ったツレがさ、そこのオーナーと知り合いで何個か貰ったからーって」


美咲に手渡して、俺はタバコを咥えて換気扇をつけから火を点けた。


「へぇー…凄いね」

「良かったら食べな」

「うん、ありがと!」


嬉しそうに微笑んだ美咲の顔を見て、一瞬ハッとし、口からタバコを離す。


「あ、ごめん。つい癖でタバコに火つけてしまった。ちょー、ベランダ行くわ」


そう言って灰皿を手に取る。


「ううん。大丈夫。今から少しだけ食べるから」

「ごめん。すぐ吸い終わるから」

「翔も食べる?」


食器棚からお皿を取り出し、視線を向けていく美咲に首を振る。


「いや、俺はいらね」


そう苦笑いに呟いて換気に向かって息を吐き出した。


「翔ってさ、あまり甘いもの食べないよね…」


箱とお皿を持ちテーブルに向かっていく美咲は座って俺に視線を送る。


「食べようと思ったら食うけど、あまり好まないだけ」

「ふーん…」


嬉しそうに微笑む美咲を見ながら、俺はタバコの火を消し、美咲の傍まで足を進める。

だけど、食べるのかと思ったけど、そのロールケーキをジッと見つめる美咲に、


「どした?」


俺は顔を覗き込んだ。