Existence *

「ちょっと下見に来ただけや」

「下見?なんの?」

「新しい店舗だそうか迷ってて、蒼真んとこ行こうおもて。あいついい土地もってへんかなぁー…」

「また新店舗っすか?」

「こっちには一個も出してへんし」

「ホスト業界の店?」

「いや、あれはもうええわ。むしろこっちであの業界の店は出されへん。ライバル多すぎやろ」


苦笑いで呟くルキアさんは、ビールを飲み干し、背を後ろに深くつけてため息を吐き出した。

ほんと、この人も次から次へと、ある意味凄い人。


「また何するんすか?」

「Barかな。俺の店でな働いてる奴がこっちで暮らすとか言うて、なんかないんすか?って言うから」

「え、まじで?そのために?」

「いや、その為って訳じゃないねんけど、なんか出せたらいいなーって、前から思ってたから」

「へぇー…」

「Barつっても落ち着いたBarちゃうで。音楽で騒ぐ方な。DJつきのクラブの方な」

「あー、そっち?」

「出店したらお前も来る?」


ルキアさんは俺に視線を向けて頬を緩ませた。


「もー、俺そんな所で働いたら騒いでまた酒に溺れるわ」

「ハハっ、せやなぁー…次の仕事も決まってるって流星が言うとったしな。超がつくほどの有名企業ってか。昔からお前はファッション業界から凄い声掛かってたもんな。そっちが似合ってるわ」

「俺、女との接客は向いてないんすよ」

「よお言うわ。向いてなかったら何年もNO1なんかなってへんやろ」


クスクス笑うルキアさんと、どれくらいの時間、話したかもわからなかった。

仕事の話、プライベート、懐かしい話。

話しに花が咲き、ひたすら話していた。


「あー、そうや!お前に渡そうと思ってたんやった。ちょっと待ってや」


外に出た時、そう言ってルキアさんはスマホを取り出し耳あてる。


「なんすか?」

「ロールケーキ貰ってん」

「いやー…俺、食わねぇっすよ」

「なんで俺がお前にあげなアカンねん。女に食わせろや」

「あー…いいんすか?」

「ええよ。いっぱい貰ってん。――…あ、流星?悪い、翔の最寄り駅まで持ってきてぇや――…」


ルキアさんから視線を逸らし、俺はポケットに入っているタバコの箱を取り出し、そこから一本取り出して口に咥える。

カチンッ――…っとジッポの音を鳴らし火を点け、煙を吸い込んだ。