Existence *

美咲が調子悪いって言ってから、もう5日は経つのだろうか。


「…ただいま」


ソファーに座ってテレビに視線を向けていると、美咲の声で俺は視線を向ける。


「あ、おかえり。調子は?大丈夫か?」

「うん。お風呂、入るね」

「あぁ」


微笑んでうん。って言った美咲の表情は、ほんと毎日疲れてるって感じの表情。

毎日、無理しすぎだろ…

テーブルに置いていたタバコの箱から一本取り出し、それに火を点けてソファーに深く背をつける。


暫くして美咲が風呂から上がり、ペットボトルの水を持ったまま目の前のソファーに腰を下ろした。


「…あのさ、」


美咲から外した視線。

その小さな声で、もう一度テレビから美咲に視線を送った。


「うん?」

「あー…うん」


小さく、そして躊躇った声。

そして美咲の視線が一瞬、俺から外れる。


「え?どした?」


しんどい?

いつもと違う美咲の雰囲気。

深く背を付けていた身体を起し、俺は目の前の美咲をジッと見つめた。


「あの…私さ、」

「うん、何?」


言いにくそうに躊躇う美咲に、どうした?と言う言葉が頭の中を過る。


「私…妊娠してるみたいなんだけど」


そっか。

妊娠か。

って、え、妊娠…って、


「…えっ、マジで?」


思わず声を上げてしまった。

その俺の声で俯いていく美咲の顔が上がっていく。

そしてその美咲の瞳とかち合った。


「どうしよっか…」


戸惑うように揺れる美咲の瞳。

あぁ、そっか。

ようやくここで分かった。

今まで美咲が体調悪かったのはその所為だと。

もちろん、そんな事、俺が分かるわけでもないし、気づくことすら出来なかった。


…当たり前、か。


指に挟んでいたタバコが無意識に口に動き、一瞬ハッとする。

そのタバコを口から離し、灰皿に押し潰した。