Existence *

「だからそう言う人材を失うのは勿体ないと思ってる」

「じゃあ、そう言う人材を作ればいいだけの話じゃねぇの?」


ほんと、それだけのことなのに。

俺を必要とされても困る。


「まぁ、そうだけどな。今、俺が見込むやつがまだ居ないんだよ」

「そんな事、知らねーっす。流星に任せとけばいいっしょ」

「アイツとお前な」

「いやー…俺、いま女と一緒に住んでるんすよ」


別に全く言うつもりなどなかった。

正直、その話は伏せたかった。

だけど、その話を出さないと諦めてくれなさそうで…

食べ終わって一息つき、水を喉に流し込むと、社長は頬を緩めた。


「知ってる。流星が言ってた」

「あー…」

「だから無理っすよって言われた」

「そう無理っす」

「そんなもん仕事は仕事。女は女だろ」

「俺、社長とは違うんで」

「お前、ほんと彼女の事、好きなんだなー…」

「そうっすね」


呟いてタバコに火を点けると、社長はフッと笑みを零した。


「お前そんなんだったか?昔そんなんじゃなかっただろうが」

「俺だって変わりますよ。まぁ…そこまでハマるとは思わなかったけど」


ほんとそこまでハマると思わなかった。

だから自分でも正直、驚いてる。


「お前、蒼真に似てんなぁ」

「よく言われるんすよねぇ…。それに次の仕事決まってっし」

「それも知ってる。まだ先だろ?この店の状況見て手伝ってくれればいいだけの話」

「手伝う?」

「別に接待しなくていい。この店が落ち着くまでな。してるうちに状況変わるかも知れねぇしなぁ…」

「ほんっと、しつこいっすね」

「俺?そう、よく言われる」


悪気はなくクスクス笑う社長に、思わずタバコの煙を深く吐き出した。

ほんと、折れねぇ人だな。

昔っから。


結局、その日帰宅したのは24時半をとっくに過ぎていた。

当たり前に美咲は帰っていて、もう既にベッドの中。


その横で俺も同じ様に目を閉じた。