Existence *

「――…あ、おい、翔。お前パスタ食う?」


部屋を覗き込んできた流星に視線を向ける。


「パスタ?あるんだったら食うけど」

「おー、間違えたから持ってくるわ」

「え、なにその間違えたって」

「オーダーミスな」


笑いながら流星が姿を消し、暫くしてから俺の目の前に皿を置く。


「お前、飯食べる様になったん?」


目の前の社長が不思議そうに視線を送って来る。


「いや、普通に食いますって」

「昔は全く食ってなかっただろ」

「そんな事ねぇっすよ」

「酒とウインターゼリーしか見た事ねぇわ」

「そう!その酒やめたら飯食えるんすよ。もう俺の食生活乱せねぇでくれます?こんなとこ来たらまた酒に溺れるわ」


吸っていたタバコを灰皿に押し潰し、俺は目の前にあるフォークを手にする。


「いや別に今は酒が飲めねぇ奴もいるし酒にこだわる事ねぇだろ」

「俺の場合、飲まずには無理な仕事っすよ。つか俺の何を望んでるんすか?」

「お前みたいな人材が辞めた事に正直、後悔してる」

「後悔?いや、俺、後悔してねぇし」

「まずNO1をずっと維持してきたやつがNO1でスパッと辞めた奴が居ないから。大概は落ちて辞めていくけど」

「…え?蒼真さんもだろ」

「いや、違うだろ。アイツはお前に抜かされて辞めた。むしろアイツは女に構ってばっかでバックレてたから」

「あー…」


桃華さんね。

思わず食いながら苦笑いが漏れてしまう。


「お前が入ってきた時、すでにNO2だっただろ?俺はすげぇなコイツとか思ってたんよ。でも当時、生意気だったからなー…」

「いや、まぁ…そうっすね。すみません…」


遊び暮れて喧嘩して、その奴らが押しかけてきた事は、ほんとに申し訳ないと思ってる。


「だからルキアがさ、NO1にならなかったら辞めろっつってただろ?」

「そうっすねぇ…」

「だから俺もお前に試したかった。俺もこの業界で長いけど、まずお前みたいな奴なかなか居なかったし」

「……」

「NO1なれっつっても、なかなかなれねぇからな。なってもすぐ落ちるから」

「……」


別にそうなろうと入った訳でもなかった。

あの頃はただただ毎日が必死だっただけ。

生活するのに必死だった。

ただ、それだけ。