Existence *

つか、俺はこんな事をしに来たんじゃない。

さっさと話して帰りたい。


「面倒くせぇなぁ…」


思わず呟いて、オーダー表を取る。

そこに書いてある酒のボトルを取り出し、


「ちょー、これ3番。持って行って」


隣にいた男にそれを渡し、そいつが持っているオーダー表を受け取る。


「あ、はい」


その受け取った紙に書かれてる名前を見て、迷うのも無理ないと思った。

普段ならあまり聞かない名前のボトル。

それを簡単にこれだと素早く出せるわけがない。

だからここで詰まって、ごった返す。


「あ、楓さん。5番の――…」

「これこれ。なんでここに銘柄わかる奴、配置しとかねぇの?」


ここに来た愁に顔を顰め、俺は持っていたボトルを差し出す。


「売り場もそれどころじゃねぇんすよ。出せる人があっちに回ってて」

「手際よくやらねぇと、こっちから詰まってくんだろうが。お前、手空いてんだったら一旦これ捌けよ」

「いや俺、席つかねぇといけないので、楓さんお願いします」


ニコッと笑った愁に顔を顰め、まだあるオーダー表を取る。

流星もこの空間で忙しく手が回らないんだろう。

まだオープンして数日。

ミーティングを十分にしたつもりでも、実際店に出ると思うようにいかなくなるのは当たり前で。


一人一人に構ってやる時間もないのは分かるが――…


「なぁ?普段ここで誰が出してんの?」


シャンパンのボトルを出しながら周りに居る男たちに声を掛ける。


「空いてる人達が主に…」

「これ、こんなここで詰まってたら遅いって言われねぇか?」

「言われます」

「ちょ、これ。先に1番卓、持って行って」

「あ、はい」


手渡して、他の奴らに視線を向け、次の伝票を手に取った。


「こんだけ種類あったら分からねぇのも無理ないと思うけど、オーダー表ため込むなよ」

「はい」

「初めから完璧に出来る奴なんていねぇから、とりあえず今は流星に言われたことだけしてればいいから」

「わかりました」


何枚か張り付けてあるオーダー表を捌いてると、「あ、流星さんは?」そう言って、俺が来た時に一番初めに会った男が焦って俺を見てきた。