Existence *

「23時には帰りてぇんだけど」

「そんな時間に帰れたらいいけどな」

「いや、普段ならいいけどよ、美咲の体調が悪いから帰りたい」

「なら、お前なんで今日にしたんだよ」

「いやー…、まぁ色々」

「んな遅くに帰って来る美咲ちゃんを毎日抱き潰してたら体調も悪くなんだろうよ」


タバコを咥えた流星が俺に向かって笑みを飛ばして来る。


「アキとは違ぇし毎日しねぇわ。ところでアイツはこっち来なかったん?」

「来たけど、この状況だから、もぉいいわっつって、あっち戻ったわ」

「そりゃそうなんだろうよ。これ、もっと要領良く出来ねぇのかよ」

「まだオープンして数日だしな。こっちに追われて向こうの店行けてねぇわ」

「別にあっちは、ほったらかしでもいいだろうが」

「まぁそうだけど、たまには――…、うわー、割ったわ」


話の途中で何かが割れる音が聞こえ、流星が立ち上がる。

部屋から出て行く流星を目で追いながらタバコを口に持って行き、深くソファーに背をつける。


「おい、これ早く片付けて。で、これなんでこんな事なってんの?…――あ、おい翔。ちょっと手伝って」


そう言ってきた流星は部屋に顔を覗かせ、俺に向かって手招きをする。


「あぁ?なんでだよ」

「人手不足」

「んな事あるかよ。こんな人ばっかいんのに不足な訳ねぇだろうが」


溢れるくらいいる。

むしろ、あっちの店より多いし、十分に足りるくらい。


「頼む、頼む」


顔を顰めて手招きをする流星にため息混じりで煙を吐き出し、タバコを灰皿に押しつぶす。

水を口に含んで俺は仕方なく立ち上がった。


「悪い、これ(さば)いて」


マグネットで貼り付けてあるオーダー表。

しかも何でこんな何枚も貼り付けてあんだよってなる枚数。

流星は俺に言うだけ言って、この場から姿を消した。