差し出した証明書を三人は食い入るように見つめ、今まで黙っていたのが不思議だったアレクシアが叫び出した。
「ふざけないで、私は立派な伯爵令嬢よ!私こそがフランゼ家の跡取りよ!」
 うん、何も聞いていないし理解できない残念な令嬢が伯爵令嬢だと、フランゼ家の跡取りだなんて叫ばないでほしい。
「あなたには一滴もフランゼ家の血は流れていないのだから、跡継ぎになれるわけがないのよ。父は婿入りでフランゼ家の血は一滴も流れていないのだから父も伯爵にはなれない。あなたはフランゼ家とは全くの他人で本来フランゼを名乗らせることも許されなかった、父が勝手をしたから名乗れた偽物令嬢よ。知識も教養もマナーもなっていないのだから。我が家を食い物にしようとしたあなたたちを除籍出来て私はすっきりよ。本日中にこの邸から出て行ってくださいね。もう、フランゼ家とは無関係の家名無しなのだから」
 ここまでは我が家に居た父とその家族に向けての話。
 ここからは、これから元婚約者に向けてのお話。
「レイゼロード、あなたとの婚約はあなたの不貞によって破棄となります。すでに証拠付きでコーネイル侯爵家にも連絡済みで婚約破棄には同意いただき謝罪の慰謝料も頂きました。今後二度と私の目の前に現れないでね?」
 最高の笑みを浮かべて、婚約破棄を告げてあげました。
 アレクシアと似た者同士で頭の弱いレイゼロードは、少しして私の言葉を飲み込んだ。
「そんな、ちょっとした遊びで本気なわけがないだろう?! 俺はフィアラの婚約者として入り婿に入って伯爵……」
 此処まで話していたので、ちょっと思いとどまった様子。
「結婚して入り婿になっても、あなたが伯爵になることは無いですね。フランゼ家は女伯爵の家系なので、女性にのみ爵位継承が認められ、入り婿は不測の事態においての中継ぎでしか認められませんので」
 父がその中継ぎの例としてはぴったりだ、全く仕事してない中継ぎなので何も参考にはならないが。
「じゃあ、アレクシアは……」
「もともとフランゼ家の娘じゃないので、爵位継承権すら持たないし、本来フランゼの名を名乗ることも許されない身分です。父の娘だったらフランゼとは何一つ関係ない娘ですので。なので、コーネイル家もアナタを面倒見れそうだから私の入り婿にと差し出したのに平民になる娘に手を出したことを知るとほとほと呆れて侯爵家はあなたを除籍するそうです。良かったですね、揃って平民ですよ」
 そう言うと、がっくりと膝をついてうなだれるレイゼロードだがほとほと切れていたフィアラとしてはさっさと彼にもここから立ち去ってほしいものである。
 この邸は先日から間違いなくフィアラの家であり、我が物顔でいた父や継母や妹は話す機会を伺っていたし、本人たちが楽しく言い出すのを待っていてあげただけなのだから。
 ちなみに粗食を静かに食べて食堂を出た後は私だけの食事をしっかり執務室に運んでもらっていたので、実はノーダメージだ。
 表向きは中継ぎの伯爵である父を立てているように見せないとならないために行っていた行動で、ちゃんと使用人たちは私に仕えているので、私の指示に従ってくれるのだ。