ハイヒールの魔法

 そっと目を伏せると、今日結婚式を挙げた友人の姿が頭に浮かんでくる。新婦が妊娠中ということもあり、式は親しい人だけを呼んだ小さくあたたかなものだった。

 高校時代の後輩から猛烈アタックを受けての結婚で、式の最中の様々な場面でもら彼女が彼からの愛を一身に受けている様子が伝わってきたのだ。

 お腹を締め付けない、ふわふわのシフォンのドレス、すごく可愛かったなぁーー元々小さくて可愛い子だったから、尚更可愛いさに磨きがかかっていた。

 幸せいっぱいな彼女を見て、瀬名は友だちとして嬉しくもあり、少し寂しさも覚える。家庭が出来たし、これから出産も控えている。きっとこれからは会う回数が減ってしまうに違いない。

 幸せそうだったなぁ。羨ましいって思うけど、でもたぶん私は結婚出来ない気がするーー友人たちが結婚をしても、自分みたいなタイプは男性の興味を引かないことはわかっていた。

 ショートカットの髪、可愛くない顔立ち、身長は167センチ。誰がどう見たって、可愛いお姫様にはなれないのだ。

『あいつ、男か女かわからねーよな』

 そう陰口を叩かれたあの日から、自分がどう思われているかわからない不安から男性と話のが苦手になり、それと同時に恋をするのが怖くなった。男の人はみんな自分のことを、そういう目で見ているような気がして、異性と話すことすら避けようとする自分がいた。

 折れたヒールを見つめながら、瀬名は涙が出そうになった。

 嘘。本当は恋に憧れているし、夫に愛される彼女が羨ましかった──でもこんな自分では誰も好きになってくれるはずがないから、こうして強がるしかなかった。

 わざと異性を遠ざける生活を送り、可愛いくなる努力もしなかった。自分からそのような生活を選んだはずなのに、今さら恋がしたいと思う自分に嫌気がさした。

 瀬名は悲しくなって靴を放り投げると、膝を抱えて顔を埋める、肩を震わせて泣き始めた