ハイヒールの魔法

「いやぁ面白いなぁ。あの聖人君子が、莉里架のこととなると仮面がはがれちゃうからねぇ!」

 火花が散る二人を見かねた莉里架が、二人の間に立ちはだかった。

「あぁもうっ! ほらほら、今日は結婚式なんだから仲良くしよう!」

 莉里架の言葉に乗るように、瀬名も大きく頷く。

「そうそう! りーちゃんの大事な日なんだから!」

 宥められた二人は、互いに眉間に皺を寄せながら黙って頭を下げた。

「すみませんでした」
「別にいいけどねぇ。今に始まったことじゃないし。安東くんって、本当に莉里架のこととなると、正気じゃなくなるよね」
「でもこれからは、守らなきゃいけないのは莉里架だけじゃないんだからね」
「そうだよー。親になったら責任重大なんだから」

 そして全員の視線が、莉里架の大きく膨らんだお腹に注がれた。

 結婚式の検討を始めた頃に莉里架の妊娠が発覚し、安定期に入ったら親しい人だけを招いた式をすることに決めた。

 そのこともあり、瀬名は安心して今回の式に参列する気持ちになれたのだ。

「もちろん、今からしっかり準備してますよ」

 自信満々に答えた葉介を見た四人は苦笑する。彼の言う準備とは、普通の人の比にならないことはよくわかっていた。

「赤ちゃん、男の子だっけ?」
「うん」
「安東Jr(ジュニア)、父親に似たらすごいことになりそうだね」
「確かに」

 そこまで話し、三人は顔を見合わせた。

「じゃあ私たちはそろそろチャペルに移動するよ」
「式が始まるまでの大事な時間、夫婦で仲良く過ごしてね」
「三人とも……本当にありがとう」

 笑顔を向けた莉里架に手を振ると、三人は控え室を後にした。