ハイヒールの魔法

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 月曜日は朝からずっとそわそわして、なんてことない出来事に過剰に反応してしまったり、ちょっとしたミスを繰り返してしまう。

 うどんを食べるだけだけど、これっていわゆる初デートになるのかな……いや、土曜日が初デート? どちらにせよ、一緒にご飯を食べるのは初めてだし……っていうか、男性と二人きりで食事なんて初めてのことだし──挙動不審になりながら頭を抱えた。

 きっとこれから彼とすることは、全てが瀬名にとっての初体験になるのだろう。そう考えると恥ずかしさで顔が真っ赤になった。

 いつもならデニムにTシャツを合わせるところ、今日は淡いブルーのゆったりめのサマーニットにしてみた。靴もスニーカーではなく、ずいぶん前に仕舞い込んだレース調のバレエスニーカーを履くことにした。

 普段のスタイルでも徹平は何も言わない気がしたが、瀬名自身が可愛いものを取り入れてみたくなったのだ。

 また可愛いって言ってもらいたい──そんな欲が自身の中で姿を現した。

 そして最後の患者を送り出した後、時計を見ながらゴクリと唾を飲んだ。まるで耳元でなっているのかと勘違いするくらい心臓が大きく打ち続け、呼吸も荒くなっていく。

「瀬名先生」
「はいぃっ⁉︎」

 突然看護師に話しかけられ、瀬名は妙な声をあげて椅子から飛び上がった。

 すると看護師は頬を染め、ニヤニヤしながら口元を押さえた。

「もしかして……デートだったりします?」

 瀬名は勢いよく後退りをすると、肯定も否定もせずに困ったように視線を揺らしてから、両手で顔を覆った。

 その反応から確信したのか、看護師たちが歓喜の声をあげた。

「やっぱり! なんか今日の先生、いつも雰囲気が違うような気がしたんですよね。ソワソワしてるというか」
「だからこの間の結婚式でいい人がいたのかなって話してたんです。結婚式は出会いの一つですからね」
「いや、その……」

 結婚式で出会ったわけではないが、そのことを言うべきか悩んで口ごもってしまう。