ハイヒールの魔法

「三木谷さん、めちゃくちゃ可愛い」
「樫村さん、直球過ぎますよ……」
「癖なんです。どうせ相手にされないなら、言いたいことを言った方がいいじゃないですか。その方が諦めもつきますし」
「……そのストレートさが羨ましいです」

 それは瀬名の本音だった。言いたいことを言えずに我慢することばかりだった瀬名にとっては、はっきり言える徹平が眩しく映る。

「私……キスするの、初めてなんです……」
「うん、そんな気がしてました」
「……知ってたなんて、恥ずかしいです……」
「実はファーストキスが俺って聞いて、かなり嬉しいんです。だからもう一度していい?」

 瀬名は眉間に皺を寄せると、頬を膨らませながら俯いた。

「……自然な流れでキスするんじゃなかったんですか?」

 すると徹平は驚いたように目を見開いてから、満面の笑みを浮かべる。

「ということは、俺の彼女になってくれるんですか?」
「樫村さんが私を彼女にしたいって思ってくれるなら、私も樫村さんを……彼氏にしたいです」
「あはは! 素直な三木谷さんも、ストレートで可愛いな」

 素直なことがストレート? ──そう疑問に思ったところで再び唇が重なり、瀬名は何も考えられずに目を伏せた。

 もしそうならば、きっと彼が素直にさせてくれるのだと、心の片隅で思った。

 目を細めた瀬名は、徹平の肩越しに朝日が上り始める様子を目にする。こんなに清々しい朝は久しぶりだった。