ハイヒールの魔法

「それは……どうしてですか?」

 徹平は困ったように頭を掻いてから、瀬名を真っ直ぐに見つめて微笑んだ。

「わかるでしょう? 帰したくなかったから。もっとあなたと一緒にいたいって思ったんです」
「う、嘘つかないでください。だって私たち、まだ会ったばかりだし……」
「会ったばかりだからこそ、もっと一緒にいたいっていう感情に意味があると思いませんか?」

 同じことを思っていたから、彼の言葉を嬉しいと思っている自分がいる。

「そんなストレートに……ずるいです」
「相手の感情を探るには、ストレートに言葉を伝えて反応を見る方が早いんです。期待して傷付くまでのスピードが早ければ、深傷にはなりませんから」
「……そんな悲しいこと、言わないでください」

 口ではそう言ってみたものの、気持ちがわかる気もした。見せかけは仲良くしていたのに、陰で酷いことを言われていたことに気付いて、絶望の淵に落とされた日を思い出す。

 そう思っているのなら、最初から言えばいいのに──。

「でも、もし相手も自分に興味を持ってくれてるってわかったら、頑張ろうって思えるじゃないですか。俺は悲しいより、そんな人との出会いに向かって急いでいるのかもしれませんね」

 彼に真っ直ぐに見つめられると、顔が真っ赤になって体が石のように固まってしまう。

「三木谷さん、本当は来て良かったって思ってますよね?」

 まるで魔法みたいな言葉だと思った。心がくすぐったくなって、息ができないくらい胸が苦しくなる。

「……思ってますよ。こんなに楽しい夜は久しぶりですから」

 徹平の手が髪に触れ、瀬名は上目遣いで彼を見つめた。

 絡み合う視線が解ける気配はなく、引き寄せられるように、目が離せなくなる。