ハイヒールの魔法

 人の目が恥ずかしくて、瀬名は徹平の肩を掴んで顔を埋める。

「あのっ! ど、どこに行くんですか……?」
「すぐですから、大丈夫です」
「大丈夫って……」
「着きました。ここです」

 顔を上げると、そこはグレーの外観のアパートの駐輪場だった。徹平は瀬名を一番端の中型バイクの後部席に乗せると、一階のある部屋に入っいく。そして部屋の中からヘルメットを二つ持って戻ってきた。

「これ、かぶってください」
「えっ、あっ、はい」

 瀬名がヘルメットをかぶっている間に、徹平はバイクに跨り、エンジンをかける。

 どうしていいのかわからずにおろおろしていると、徹平は瀬名の手を取って自分の腰に回す。

「ちゃんと掴まっててください」
「は、はいっ!」

 急に距離が近くなり、瀬名の鼓動がとてつもない速さで打ち始める。頬に触れる徹平の背中にもたれかかっていいものか悩んでから、振り落とされる怖さを想像し、諦めたようにギュッとしがみついた。

 瀬名が深呼吸をするとともに、バイクがスピードを上げて走り出した。