ハイヒールの魔法

「あの……時間はたっぷりあるし、他にどこが似てるか探してみませんか? あっ、もしよろしければ、お名前を聞いてもいいですか?」

 瀬名がおずおず言うと、男性も同じ気持ちだったのか、すぐさま頷いた。

樫村(かしむら)です。樫村徹平(てっぺい)、二十九歳です。いいですね、俺も三木谷さんのことが知りたいです。三木谷さんの下のお名前をきいてもいいですか?」

 二十九歳と聞いて驚く。大学生だと思ったなんて、口には出来なかった。

「あぁ、すみません。三木谷瀬名と言います。今年二十八歳なので、樫村さんの一つ下ですね」
「年下でしたか。あの、お医者さんですよね」
「家の小さな病院を手伝ってます。父が内科で私が小児科」
「お子さんが好きなんですか?」
「好きですね。保育士と悩んだくらいですから。樫村さんは?」
「製薬会社の営業です。三木谷医院の近くの薬局に薬を卸してまして」
「あぁ、なるほど。近くにいても気付かないものですね」

 頭の中で近くの薬局を想像したが、徹平が出入りする姿を思い出すことはなかった。