ハイヒールの魔法

「私ね、こう見えて可愛いものや人が大好きなんです。そんなこと、なかなか口には出来ないけど。だから結婚式で可愛いふわふわのドレスを着るのが憧れだったんです。でもそんな自分の未来が想像出来なくて」
「それってドレスが着たいんですか? 結婚したいんですか?」

 瀬名はキョトンとした顔で男性を見てから、顎に手を当てて考え始めた。結婚式に参列した時、ドレスを着ている莉里架に見惚れた。でも愛し合う二人の姿を羨望の眼差しで見つめていた自分を思い出す。

「私、恋愛漫画とか恋愛小説が大好きなんです。恋に夢を見て、でも現実はそうはいかなくて諦めていました。でもやっぱり……口には出せないけど、結婚にもドレスにも憧れます」

 本当の気持ちを口にしたのはいつ以来だろう──知らない人だからこそ、隠すものがないのかもしれない。

「でも結婚って一人では出来ないってこと、新郎新婦を見ていて気付かされたんです。まずは恋愛しなきゃいけないのに、男に間違われるような私なんかが相手にされるわけがないと思って、異性との関わりを極端に避けている私は、たぶん一生出来ないことなんだろうな」

 不思議そうにこちらを見ている男性の視線に気付き、瀬名も不思議そうに彼を見た。