「離してください!」
振り解こうにも、男性の力が強くて振り解けない。見た目は男性と間違われるのに、当たり前だが非力な自分が悔しくなる。
「待てって言ってるだろ! 靴だけじゃなくて、ストールも落としてって……」
涙を流す瀬名を見て、男性はギョッとしたように目を見開く。それから困惑したように視線を揺らしている間に、瀬名の胸の谷間が見えたらしく、驚いたように一歩退いた。
「えっ……本物の女……?」
初対面にも関わらず、失礼な発言ばかり繰り返す男性に、瀬名の怒りは頂点に達する。
「すみませんね! 男性にしか見えなくて。靴とストール、返してください。どうせ終電も行っちゃったし、タクシーを拾わないとなので」
頬を膨らませ、男性の手からパンプスとストールを奪おうとしたが、自分よりも小さい男性の力の方が強く、なかなか離してもらえないことへのイライラが募っていく。
男性は少し考えてから、瀬名を真っ直ぐに見つめた。
「もう終電は行っちゃったんですね。それなら足も痛そうですし、良かったら座りませんか」
急に口調が穏やかになり、話し方も敬語になった。そのため瀬名の中のイライラが少しだけ落ち着く。とはいえ、間違われたことに対する怒りがなくなったわけではなかった。
「……嫌です。早く帰って寝たいので」
「明日予定でも?」
「……予定なんかありません。予定がなきゃ、早く帰っちゃいけないんですか?」
「じゃあお詫びをさせてください。その後で俺がタクシーを呼びますから」
初対面な上、いきなり暴言を吐いたこの男に引き止められたことに不快感を覚える。
「お詫びなんか必要ありません」
「じゃあこれは返しません」
「ど、どうしてそうなるんですか⁉︎」
パンプスとストールを手に、こちらを見ている男性は、決してからかっているわけではなく、真剣な表情を浮かべている。瀬名と同じ目線の高さだからこそ、ダイレクトに伝わってくるものがあった。
その姿にドキッとする。今まで瀬名にそういう言葉を投げかけてきた人たちは、薄ら笑いを浮かべて、バカにしたような視線を投げかけてきたからだ。
この人はどこか違うのだろうか──不思議とそんな気持ちになった。ギュッと閉ざしていた唇を緩め、瀬名は口を小さく口を開ける。
「わかりました。少しだけなら……」
早く帰りたかったし、パンプスとストールもを返してもらいたかった。それに地面を素足で走ったせいで足に痛みがある。
瀬名と男性は近くにあったベンチまで歩き始めた。
振り解こうにも、男性の力が強くて振り解けない。見た目は男性と間違われるのに、当たり前だが非力な自分が悔しくなる。
「待てって言ってるだろ! 靴だけじゃなくて、ストールも落としてって……」
涙を流す瀬名を見て、男性はギョッとしたように目を見開く。それから困惑したように視線を揺らしている間に、瀬名の胸の谷間が見えたらしく、驚いたように一歩退いた。
「えっ……本物の女……?」
初対面にも関わらず、失礼な発言ばかり繰り返す男性に、瀬名の怒りは頂点に達する。
「すみませんね! 男性にしか見えなくて。靴とストール、返してください。どうせ終電も行っちゃったし、タクシーを拾わないとなので」
頬を膨らませ、男性の手からパンプスとストールを奪おうとしたが、自分よりも小さい男性の力の方が強く、なかなか離してもらえないことへのイライラが募っていく。
男性は少し考えてから、瀬名を真っ直ぐに見つめた。
「もう終電は行っちゃったんですね。それなら足も痛そうですし、良かったら座りませんか」
急に口調が穏やかになり、話し方も敬語になった。そのため瀬名の中のイライラが少しだけ落ち着く。とはいえ、間違われたことに対する怒りがなくなったわけではなかった。
「……嫌です。早く帰って寝たいので」
「明日予定でも?」
「……予定なんかありません。予定がなきゃ、早く帰っちゃいけないんですか?」
「じゃあお詫びをさせてください。その後で俺がタクシーを呼びますから」
初対面な上、いきなり暴言を吐いたこの男に引き止められたことに不快感を覚える。
「お詫びなんか必要ありません」
「じゃあこれは返しません」
「ど、どうしてそうなるんですか⁉︎」
パンプスとストールを手に、こちらを見ている男性は、決してからかっているわけではなく、真剣な表情を浮かべている。瀬名と同じ目線の高さだからこそ、ダイレクトに伝わってくるものがあった。
その姿にドキッとする。今まで瀬名にそういう言葉を投げかけてきた人たちは、薄ら笑いを浮かべて、バカにしたような視線を投げかけてきたからだ。
この人はどこか違うのだろうか──不思議とそんな気持ちになった。ギュッと閉ざしていた唇を緩め、瀬名は口を小さく口を開ける。
「わかりました。少しだけなら……」
早く帰りたかったし、パンプスとストールもを返してもらいたかった。それに地面を素足で走ったせいで足に痛みがある。
瀬名と男性は近くにあったベンチまで歩き始めた。

