「さ、早速撮影よ~!はい!準備!」


セットを指さす荘ママ…。


って、なにあのセット!?


赤い王子様が座るような横長の椅子……。


セットに何円かけてるの!?


「あの、私は無理で…!」


「はい!じゃあやりましょ!スタンバイ~!ほらこっちこっち!」


またしてもずるずると引きづられながら座らされてしまった。


「こうして…よし!いい感じ!」


いや何この座り方!尋常じゃないって!!


足をソファのひじ掛けにかけながら肘ついて……いやお姫様どころか悪魔さまというか……。


っていや、本当にやるの!?嫌だ、嫌だ、やらないんですけど!?


「あの、本当に私やらないんですけ……」


「はい!みんなもスタンバイ~!」


何なの、これ…。


気まずいし、なにこの……。


私を囲うように隣には荘と嫌味プリンス。


しかも髪やら手やらに触れてるこの体制はなに!?


他四人は四人で後ろで囲っている、んだけど……。


何をイメージしたらこうなるの!?


気まずくて下を向いていると、


「梨華、前」


隣の荘がこそっと耳打ちしてきて前を向いた。


「はーい、じゃあ行くよ~!」


「はい、そのままこっちに目線くださ~い!」


何なの、ほんとに……。


私は撮影するんじゃなくて見に来たんだけど!?


その後何回かシャッター音が鳴り響いた。


「はい、次セットなしで!荘くん、梨華ちゃんのことお姫様抱っこしてくれる?」


今、なんて!?


むり、無理無理。


「無理です…」


「………」


そう言ったのにも関わらず膝裏と背中に手が触れた。


一瞬のうちに宙に浮いてしまった。


……っ…絶対重いし…。


「……俺だけ見てろ」


っ……何それ…。


「梨華ちゃんその表情、いいよ~そのままでこっち!」


どんな表情してんのよ…私…。


「次FLAMEくんたち二人囲む感じでいくよー!」


なんで私はこんなことに……もう半ばあきらめながら(多分)死んだ魚の目をしてたと思う。


それなのになぜかカメラマンさんたちは絶賛してた記憶がある……。


(もう二度と行かない……)