「梨華?」


荘だ。絶対……。


「いるんだろ?出て来いよ」


むり。だから隠れてるに決まってるじゃん。


足音がどんどん近づいてくる。


そして、挙句の果てには開けられてしまった。


私を見るなり一瞬目を見開いたと思えば片手で顔を覆った。


「……なんてことしてんの」


なんてこと、って……メイクなんですけど…。


「何、攫って欲しい?」


攫って?何言ってんの……。


ていうか荘だって……。


黒を基調としたスーツみたいな衣装で髪はワックスで横に流しているせいで一段と大人っぽくなっている。


「…惚れた?」


ほ、惚れた…?そんなわけ…!


「…、ないし」


「へぇ?」


楽しそうににやにや笑う荘。


「…可愛いよ」


か、可愛い…!?って言った!?


……っ、可愛いんじゃなくて大人っぽくしたのに。


「……別に」


「ほんと素直じゃねぇ。ほら撮影始まんぞ」


っ……。


ドキドキと胸が早鐘を打つ。


ほんとはそんな恰好してほしくない………


なんて、私らしくない。


「……うん」


こんな気持ち、言えない。


――言えないよ。