「なぁ、今日も一緒に帰ろーぜ」

わかってる。
どうせ「宿題やった?」って言われる。
でも、それでいい。
その声が聞きたくて、声をかけるんだ。

「お前が見せてくれるから大丈夫」
「は!? バカじゃないの!?」

バカでいい。
だって、その“怒った顔”が可愛いんだから。

昔から、ずっと一緒にいる。
ケンカも、笑い合うのも、全部“当たり前”だった。

けど最近、
当たり前じゃなくなってきた。

髪を結ぶ仕草とか、
笑うたびに揺れるピアスとか。
全部、目が離せなくて。

そんな自分が、ちょっと怖かった。

「なぁ、明日さ。ちょっと寄り道しね?」

ほんとは決めてた。
あの日の落書きを見せたくて。

――“ずっとなかよし”って書いたブランコ。

「これ、覚えてる?」
「…小1のときじゃん」
「うん。あのときの“ずっと”ってさ…
 俺、本気だったから」

言った瞬間、心臓が爆発しそうだった。
それでも、伝えたかった。
“なかよし”のままじゃ、もうイヤなんだって。

「だからこれからも、“ずっと”な?」

頭を撫でたら、
あいつが顔を真っ赤にして俯いた。

「……バカ。そういうの、反則」

反則?
じゃあ、もうひとつ。

「じゃあ、反則ついでに」

そっと、唇を重ねた。
初めて触れたくちびるの温度に、
頭の中が真っ白になった。

――幼なじみ、なんてもう呼ばせない。
これからは、“彼氏”だから。