雨の日の昇降口は、いつもより暗い。
傘を忘れた私は、立ち尽くしていた。
灰色の空を見上げながら、雨の音だけが響く。
すると、誰もいなかった靴箱に人の気配がした。
靴を履き替えて私の横を通り過ぎていった。
その背中を眺めていると、彼は振り返った。
開こうとした傘を見下ろした後、こちらを向いた。
「入る?」
彼の言葉に一瞬ためらったのは、きっと私のまだ名前のない感情だ。
傘の中は思ったよりも狭くて、彼の声が近かった。
分厚い雲の隙間から、夕日が差しこぼれる。
別れ道で手を振る彼を見て、
明日も雨ならいいのに、なんて思ってしまった。
