『好きだよ』
イヤホン越しに届いた第一声は、あのとき勇気を出して贈った”想い”そのものだった。
飛行機の轟音とともに、音は途切れた。
けれど――私たちの想いは、途切れることなく繋がっている。
彼がくれたピンクのマフラーが、いまも私を温め続けてくれるから。
――私と繭花さんは、あれからなんでも話せる仲になった。
敦生先輩から離れろと警告されたり、イヤホンを捨てられたり、マフラーを破かれたり――たくさんのことがあったけど、それはもう過去のこと。
お互いが、最初からちゃんと話し合えていたら。
きっと、少し違う未来があったのかもしれない。
彼女が”お姉さんのイヤホン”というフィルターを通してくれたとき、私は初めて、自信を持たなきゃいけないって思えた。
繋がり合うことの大切さに、ようやく気づけたんだ。
「なんの曲、聞いてるの?」
イヤホンを耳にしていた私に、繭花さんが尋ねる。
私は頬を赤らめて、くすっと笑った。
「えへへ、内緒」
「えー、聞かせてよ」
「だめっ。聞いていいのは、私だけ」
スマホに入っているのは、曲じゃなくて敦生先輩の声。
体は遠くにいても、声はすぐそばで聞こえる。
そんなふうに、何気ない時間を共有できるのが嬉しい。
これからの日々は、恋を少しずつ育てていく。
フィルター越しに届く声が、私たちの未来を優しく照らしてくれる。
遠くても、近くても――。
私の声はいちばん近くで伝え続ける。
これからも、ずっと。
【完】



