「明日はアメが降ればいいなーー。」
隣の座席で声がした。
バスが交差点を左に曲がったときだった。
ワイパーが元気よく手を振った。
ふと視線を移すと、真っ赤なレインコートと黄色い長靴。
二つ結びのてるてるぼうず。隣に座っている女性が、「そうだね。」と優しく微笑みかけている。
___そうか。アメか。
アメが降れば、この子はきっと大きな口を開けて、一つ残らず小さな口の中に詰め込むだろう。
子どもは神の子。アメが神様の贈り物なら、それくらいしてやったっていいだろう。
でも、神様はアメをくれない。
争いは、きっと一粒のアメから始まる。
神様は、そんな単純なこと、きっと見当がついているから。



