「……と、いうわけですね。わたしはマリーゴールドに恋をしてしまったのです」

カメラに映るその人は、儚げに笑いながらそう言った。

美しい。あたしはそう思った。

同時に、“これは実話なのか?”という疑問も湧き上がった。

花に恋をするなんて有り得ない、信じられない。あたしは失礼ながら、そう思ってしまった。あまりにも現実味がなかったからだ。

Q、今、リリィさんのことをどう思っていますか?

テレビスタッフがカンペで彼女に質問をする。彼女は美しく微笑みながらこう答えた。

「リリィのことは、いつまでも愛しています。過ごした時間は3日ほどですが、思い出は永遠です。ねえリリィ、愛しているわ、と、今でも本心から言えますよ。わたしの恋は永遠です」

Q、どうしてリリィと名付けたのですか?

「リリィという響きが美しい花にぴったりだと思ったので。本能的に名前が浮き出てきたんですよ。まあ、リリィって百合の花の意味らしいですけどね」

彼女は口を隠して、クスクスと笑う。両親が逮捕されたと同時に、警察に生まれて初めて写真を撮られたというが、その時とはまるで別人のように、美しく垢抜けていた。

良いルックスの塊。彼女は初めから、美しさの素材を持っていたのかもしれない。

メイクをすれば、人は変わる。よくそう聞くが、彼女は髪を洗い、身体を洗い、身だしなみを整えただけで、こんなにも美しくなれた。

神様は、どうしてこんなにも不公平な世の中を創ったのだろうか。


「……はい、カット!OKです!ありがとうございましたー!」

周りがパチパチと拍手をする。あたしもつられて拍手をする。

美しい彼女は微笑みながら、「ありがとうございました」と深くお辞儀をする。頬にも腕にも足にも首筋にも、傷跡が残っていた。