わたしはたぶん、ショックを受けました。だから、警察署で、泣き崩れました。

警察の人は、困惑していました。そして、警察の人は、割れた花瓶を片付けて、リリィをゴミ箱へ捨てました。

わたしは生まれて初めて叫びました。生まれて初めて愛したリリィを、ゴミ箱に捨てられたからです。

でもリリィは死んでいるから、これが正解だったのかもしれません。そもそも花の死を悲しんでいるのは、わたしだけだったのですから。

それでもわたしは、叫び続けました。

「リリィ!リリィ!!あいしているわ!!」

わたしはリリィを愛しているわ。

だから、リリィを返して。

リリィ、死なないで。


わたしは“良い言葉”を、“あいしているわ”しか知りませんでした。何故なら、日々虐待を受け、“悪い言葉”しか吐かれてこなかったからです。

わたしは、あいしているわ、と叫び続けました。


今ならこの気持ちを、具体化できます。

わたしのあの気持ちは、花に対する恋心だったんです。

孤独から救ってくれた、大切な花……マリーゴールドのリリィ。

わたしはリリィに恋をしていました。

そして、そんなリリィを……殺してしまいました。