わたしは家を出て、リリィを抱えて走りました。

父と母は追いかけて来ませんでした。

通りかかったおじいさんに、わたしを見てびっくりされて、「だいじょうぶかい?家から逃げ出してきたのかい?」と聞かれました。わたしは、頷きながら、「リリィ、リリィ」と小声で言い続けました。

おじいさんは警察を呼びました。わたしの傷跡を見て、「誰にやられたの?」と聞きました。わたしは「リリィ、リリィ……あいしているわ」と言いました。

父と母は警察に連れていかれました。それよりもわたしは、リリィを治せる人を探していました。

「リリィ、リリィ……。」

わたしはリリィをぎゅっと抱えて、走り出そうとしましたが、警察の人に、「警察」に連れていかれて、リリィを助けられませんでした。

リリィはどんどん元気をなくして、喋らなくなりました。

「リリィ、リリィ?ねえリリィ、あいしているわ」

____返事をして。

と、わたしはたぶん、思いました。何か言って、と。

リリィは、あいしているわと言わなくなりました。わたしはそれが、ショックでたまりませんでした。

裏切られた気持ちになって、わたしは花瓶を手放しました。するとリリィを包んでいた花瓶は、パリンと音を立てて割れ、リリィは飛び降り自殺をしたかのように倒れ込み、動かなくなりました。

リリィは死にました。


____花瓶を割ったわたしは、リリィを殺してしまったのでしょうか。