土曜日の朝一。

 僕は風呂敷に檜扇と一緒に包んだ生首を抱えて、車の助手席に乗り込んだ。


「お前、それをどこで拾ったんだ?」


 父さんは思いっきり嫌そうな顔をして、僕の膝の上を睨んだ。


「学校帰りの空き地」

「風呂敷は?」

「……メブキさんが貸してくれた」

「生き物を拾っちゃダメだって言ってるだろう」

「ごめんなさい」


 父さんの中で幽霊は『生き物』の範疇なんだと思うと面白かったけど黙っていた。


「あと彼女は人間にしなさい」

「彼女なんていないよ」

「……彼女でもないのに、そんなに匂いをつけさせるんじゃないよ」


 父さんは首を横に振って、アクセルを踏んだ。

 何も言わずに車を走らせる。

 檜扇を返すときに、猫娘を問い詰めておこう。



 やがて、小さなお寺に着いた。

 父さんは僕に土鈴を渡した。


「なんかあったら行くけど、自分で拾った始末は自分でつけろよ」

「うん」


 頷いて車から降りる。

 父さんがじろりと僕の影を睨んで、影は小さくなった。



 境内に入ると、入ってすぐの端に碑が建っていた。

 周囲に人気が無いのを確認してから、僕は風呂敷をほどく。


「あ……ああ……」


 生首が目を見開いた。

 その目には何が見えているのか、僕にも影にもわからない。

 はじけたように、生首の目から涙がぼろぼろこぼれた。