「ふむ、終いでござるな」


 生首がカラカラと笑って、猫娘が唇を尖らせた。


「ワンパンとか、おかしいでしょ!!」


「なに、児戯でござるよ。言ったであろう? 小童の相手は得手とな」


「にゃーーーっ! ムカつく!」


 結局、僕がサイコロを振ったのは一度だけだった。

 正座は苦手だから、すぐに終ってよかった。


「帰っていい? 不満なら檜扇は返すよ。別になくていいし」


 猫娘が涙目で僕を睨んだ。

 しばらく睨み合って、飽きてきたから僕は膝をポンと叩いた。


「おいで」

「ふにゃっ」


 瞳を光らせて、猫娘が僕の膝に飛び込んできた。

 髪を梳き、耳の後ろをかいてやる。

 猫娘はゴロゴロ喉を鳴らして僕の腰にしがみついた。


「あたしのこと、連れて帰ってよ」

「ヤダ。君、面倒だから」

「生首は連れて帰ったのに」

「連れて帰らないほうが面倒そうだったから」

「名前で呼んでよ」

「ヤダ。懐かれたくないし、僕は君を僕のものにしたくない」

「なんで」

「僕の方が先に死ぬから」

「やーだー!」


 駄々をこねる猫娘を一頻り撫でてから、最後に手の甲で頬を撫でて立ち上がった。


「檜扇は借りていくよ」

「ええ、返しに来なさいよ」


 ムスッと不細工な顔をした猫娘に小さく頷いて、僕は歩き出した。

 影も生首を抱えて付いてくる。


「……それがし、何を見せられていたのでござろうか」

「考えるな。感じるんだ」

「人外ラブコメの波動を感じ申した」

「まあ、こいつの周りは人外ばっかだから」

「ははは、その筆頭が何を申すか」


 影と生首はヒソヒソやってるけど、全部聞こえている。

 うるさいな、もう。