「そういうわけで、それがしが戯れに付き合おうぞ!!」

「結構です」


 意気揚々と笑顔を向けた生首に、猫娘が即答した。


「遊び相手を求めているのでござろう? それがし、小童の相手は得手ゆえな」

「見ろよ、あの猫娘の顔。ウケる!」

「やめな、影。気持ちはわかるけど」

「うっさい! 聞こえてるわよ、そこ!!」


 猫娘はキーキーと地団駄を踏んでいるけど、生首のキラキラした笑顔を見て諦めたらしい。


「しゃーないわね、遊んでやろうじゃないの」


 そう言って猫娘が取り出したのは……お椀?


「むむ、博打でござるか。良い良い、得手でござる」

「はん、吠え面かかせてあげるわ」

「何しようとしてるの?」

「丁半博打だな」


 首を傾げる僕に、影が教えてくれた。

 サイコロを振る賭け事だという。


「あなたが振って。あたしと、そこの生首が答えるわ。生首が一度でもあたしに勝てたら終いにしてあげる」

「ほほう、手並みを拝見といこうか」

「猫娘が勝ち続けたらどうなるの? 僕、晩ごはんまでに帰りたいんだけど」


 猫娘はニヤーっと笑った。


「あなたが帰らないと、父君が迎えに来るでしょう?」

「父さんは既婚者だし、母さんのこと大好きだから猫娘なんかに興味ないよ」

「それを唆すのが腕の見せ所なのよん」


 影がため息をついた。

 生首は「そうかそうか」と頷く。


「どうか、安心して待たれよ。貴殿の父君に何かあると、それがし体を探しに行けなくなるゆえな」


 仕方ない。

 どうしても、どうしようもなくなったら、父さんが助けてくれると思うし。

 僕は影に目配せして、賽を振った。