学校帰り、空き地を通りかかったらメブキさんとメトロ、他の兄弟たちが遊んでいた。


「こんにちは、坊や、影。生首はお元気?」

「元気です。僕の部屋で地図を見てることが多いですね」

「あら、いいじゃない。私も好きよ。どこまでもいける気がするもの」


 メトロがメブキさんに甘えて擦り寄った。

 メブキさんは背中を舐めてあげている。

 他の子猫も寄ってきて、メブキさんは順番に毛づくろいをしていた。


「なに寄り道してるんだ」

「父さん」


 ワイシャツにスラックス姿の父さんが空き地の入り口に立っていた。

 メブキさんは「にゃあん」と可愛らしい声を出した。

 父さんはメブキさんに軽く会釈をして、僕を呼んだ。


「帰ろう。母さんが待ってる」

「うん。じゃあまた、メブキさん」

「ええ」


 メブキさんは僕にだけ聞こえる小さな声で言った。


「坊やの父君、ぜーんぜんなびいてくださらないの。そこがいいのですけど」

「僕の父さんに何してるんですか」

「いい匂いがするのよ、父君も坊やも」


 メブキさんに背を向けて父さんに駆け寄った。

 他愛もない話をしながら家に向かう。


「家に入る前に、毛を落としておけよ」


 父さんはカバンから服のホコリ取りを出して、僕の服を払った。


「そんなについてる? メブキさんたちに触ってないけど」

「つくのは毛だけじゃないし、他の雌の匂いをつけて帰るもんじゃない」

「ふうん?」


 父さんは自分の服も払って扉を開けた。

 もしかしたら、生首が女だったら父さんは見過ごしてくれなかったかも、なんて思った。