「承知つかまつった」


 父さんに車を出してもらうことを言ったら、生首はあっさり頷いた。


「風呂敷に包むから、景色とかは見えないよ。車酔いは大丈夫?」

「車なる機械に乗ったことがござらんからなあ」

「体がないから、吐いてもなんも出ねえから大丈夫だろ」


 影が適当を言った。

 そういう問題じゃないんだけど。

 生首がいいならいいけどさ。


「ときに、貴殿の父君は何者だろうか」

「普通の会社員だよ」


 ……神社の三男坊で、僕よりそういうものに構われやすいけど。会社員としては普通だと思う。たぶん。

 母さんが幽霊とかあやかしとかまったく見えないし気づかないから、父さんのそういう能力が薄まって僕に引き継がれたものだと思われる……って神社で神主さんをやってるじいちゃんが言っていた。

 僕としては、それだけじゃないだろうと思ってるけど、それはいい。


「あの盛塩も、近寄りがたい雰囲気も、只者とは思えぬのだが」

「僕には普通の父さんだからね」

「それはそうでござる」


 影が何も言わないのをいいことに話を戻す。


「とにかく、車で生首と縁のある慰霊碑に行く。それでどうなるか、様子を見よう」


 生首と影が頷いた。

 その筋書きがどうなるか、僕にはわからないけど。