翌朝はよく晴れていた。

 僕と影は朝一で『春の庭』で百合の朝露を集めて、学校に向かった。

 その日の授業は昼までで、給食を食べたらおしまい。

 校舎を出たら、太陽は中天にある。


「集めた?」


 家の目前で、甲高い声に呼び止められた。


「うん、全部集めたよ」


 振り返ると猫娘がニヤーっと笑って立っていた。


「早かったじゃない」


 足元からスルスルと影が立ち上がって、頼まれていたものを詰めたカゴを猫娘に突き付けた。

 猫娘が受け取った途端に、影は僕と猫娘の間に立った。


「そんなに警戒しないで。あたしが『春の庭』に入れないの、知ってるでしょ。それと髪を貰いに来たの」

「生首を連れてくるよ」

「あら、悪いから伺うわ」


 猫娘は相変わらずニヤニヤ笑っていた。


「ごめんだけど、変なものを持ち込まないように親に言われてるんだ。それに、僕の部屋は盛塩してあるしね」

「んふふ、警戒心が強いのね、あなたも影も、……それからあなたのお父様も」


 笑う猫娘に背を向けて家に入った。

 陽気に迎えてくれた生首をメブキさんの風呂敷に包んで、また外に出る。


「やや、こちらが猫娘殿でござるか。めんこいお子でござるな」

「ちょっと、そんなものにその風呂敷使わないで。あとあんたより年上だからお子とか言うな。めんこいじゃなくて美しいって言いなさいよ」

「そんなもの?」


 日がゆっくりと中天から西に傾いた。

 生首の影が丸から徐々に横顔になっていく。