エンドロール

 「ちょっと悪化してますね」

 診断室で、先生は呆気なくそう言った。

 「まあ、手術は任意ではありますが、一応入院して様子見てみましょうか」


 家に帰ったあと、すぐに病院に行った。
 学校から解放された安堵も相まったのかもしれない。
 呼吸できなくなって救急搬送はされなかったものの、すぐに母さんに運ばれた。

 悪化と言われてもそんなにショックを受けなかった。
 別に僕には大切な友人もいない。
 大切なものもない。
 離れたくないと思うのは母さんだけだ。

 認めたくないけれど、内心では死んでもいいとか思ってしまっているのかもしれない。


 「ごめん、母さん、まだ仕事あって。
 また明日ね」

 病室に行ってすぐ、母さんはそう言った。

 当然のことなのに、こっちの方がショックを受ける。‪
 仕事をしなければ生きていけないけど、息子より仕事を優先する母さんに少しだけ悲しくなる。
 寂しくなる。

 病院に連れていってくれるだけありがたいと思わなきゃ。
 学校の送り迎えをしてくれるだけありがたいと思わなきゃ。

 僕を優先してくれなんて口が裂けても言えない。
 でも、心の奥底で思ってしまう。
 1日だけでも、仕事を休んで、僕の看病をできないものかと。
 それでも、1日も休まないのは、僕を厄介だと思っているのかもしれない。
 面倒くさいと思っているのかもしれない。

 そんなことを考える僕は最低だろうか。