目覚めたときには病院で、消灯後の病院の天井が目の前に広がっていた。
 カーテンで仕切られた私のスペースにはほのかに明かりが灯っていた。

 ずいぶんと眠ったのかいつになく頭も体も軽くて、なんでもできそうな気がする。
 静かに起き上がり、窓の近くに歩いていく。
 心底、窓側のベッドでよかったと思った。

 閉じられたブラインドを少し動かして窓の外を見てみた。
 東の方からゆっくりと太陽が昇ってくる頃で、思ったよりの眠っていたことがわかった。

 改めて落ち着いて自分の身に何が起こったのかを思い出してみる。
 あまり記憶がはっきりしないけど、桐原さんと現場に行って、意識を失ったはずだった。

 左腕には点滴用の器具がつけられていて、右手首には患者用のバンドがついている。
 ここは何科なのかすらもわからず、またベッドに戻る。
 おそらく専門的な説明はもっと後になるだろう。
 再び重くなってきた瞼の動きに任せて、眠りについた。

 「涼風さーん。
 おはようございます」

 元気のいいハリのある看護師の声で目を覚ました。
 いつの間にか外は明るくなり、青い空が広がっていた。

 「ご気分いかがですか ?
 随分で眠っていられたのでお体も軽くなったんじゃないですか?」

 「あ、はい。
 だいぶ良くなりました」

 「それなら良かったです。
 少し換気しますね」

 看護師はそう言ってすぐ横の窓を小さく開けて、医師を呼ぶために病室を出ていった。
 窓の外からは春の陽気な風が気持ちよく吹いてきていて、髪をサラサラとなびかせた。

 「涼風さん、おはようございます」

 しばらくして長身の医師が入ってきた。

 「おはようございます」

 「ちょっと胸の音聞きますね」

 ドラマなんかでよくあるような一連の診察を終えて、

 「涼風さんが運ばれてきた際に行った諸々の検査でも特に異常は見受けられませんでしたし、失神の原因は過労だと思われます。
 ただ内服薬や持病によって診断も変わってくるので、一応お聞きしておきたいのですが、持病などお持ちですか ?」

 「あ、えっと、PTSDと診断されています。
 色々ありまして」

 「なるほど。
 では思い出すのはお辛いと思うのですが、失神の原因に心当たりはありますか ?」

 「はい。
 きっと目の前で起こっていた事が私にはまだ刺激が強すぎたんだと思います」

 「わかりました。
 今、胸の痛みや動悸などは感じませんか ?」

 「全く」

 「そうですか。
 それでは、特に身体的に異常がないと思われますので、今日は1日休んでいただいて明日、退院手続きを行いましょう」

 「わかりました。
 ありがとうございます」

 「お大事になさってください。
 何かありましたらすぐに言ってくださいね」

 病室に静寂が戻ってくると、私はふと思い立って上着を着て病室を出た。

 まずはここが何科なのかを知りたかった。
 ナースステーションは病室のすぐ横にあってすぐに何科であるのかはわかった。

 循環器内科だった。
 確か、心臓や肺などの病気の人が入院するところだ。
 失神だったらここが1番合っていたのだろう。