最近、体の調子が悪い。
 医者によると、ストレスもあるという。
 新しい環境で、プレッシャーや緊張がある分、心臓にも負担がかかっていると。

 この前の入院から、薬の量も増え、通院頻度も増えた。
 仕事を休んでしまう日も自然と増えた。

 「おはようございます」

 前日に休んでしまい、少し申し訳なさをもって出勤した。
 デスクには溜まっている仕事が可視化されているように書類が溜まっている。

 「椎名さん、昨日、急ぎの仕事代わりにやっておきました」

 決して恩着せがましい言い方ではなかった。
 ただの報告と言っていいくらいにあっさりとした言い方で、隣のデスクの千葉さんが声をかけてきた。

 「あ、ごめんなさい」

 わかっているのにそれでも謝罪の言葉が口を突いて出てしまう。

 「ありがとう…ございます」

 そうして、まただと思いながらお礼を言う。

 「あ、椎名くん、ちょっといいかな」

 課長が通りすがり際に僕の名前を呼んだ。
 驚いて顔を向けると、課長が僕を手で招いている。

 「あ、はい」

 駆け寄って行くと、課長はそのまま課長室に入って行った。
 僕も慌てて中に入ってドアを閉める。

 「えっと、結論から言うんだけど、椎名くん、しばらく休んだらどうかな ?」

 「へ ?」

 予想もしていなかった言葉に間抜けな声が出た。
 休職ということなのか ?

 「うーん、なんていえばいいのかな。
 誤解はしてほしくなんだけどね、君は今は来るべきじゃないと思うんだ。
 別に来られたら困るわけではない。
 だから、決して解雇というわけでもない。
 ただ、きっと椎名くんは体調も安定していないんだろう ?
 一度、休職した方がお互いのためだと思わないか ?」

 課長が連ねる遠回りでしかない言葉を聞きながら気が抜けてしまった。
 いつか、言われるかもしれないと思っていたことだ。
 第一、覚悟していたのは解雇の方だが。

 「君の事情はこちらも十分、理解しているつもりだよ。
 きちんと仕事はしてくれているし、君の順応能力にも助かっている。
 しかし、いきなり休まれたりしたらやはり困るし、これから何かあってからじゃ遅いと思うんだよ。
 だから、一度、体調が安定するまで休職しないか ?」

 これは、提案じゃないと思った。
 命令だ。
 あるいは頼みだ。

 休んでほしいと思っている。
 僕が休んだ方が、きっと会社のためだ。

 「はい、わかりました。
 しばらくの間、休職させていただきます。
 ご迷惑おかけします」

 それから、事務的な話をして、表面上の謝罪を言い合って、僕は課長室を出た。
 長く話していたようで、会社はいつもの活気に満ちていた。

 デスクに戻って、新しく飲み始めた薬を飲んだ。

 目の前に広がる大きな窓からは、高くなっていく陽が静かに降り注いでいた。