エンドロール

 最近は、2カ月に一度に減ったPTSDの通院の日。
 薬を飲む量も減って、発作が起こる頻度も低くなった。

 これから、仕事を続けていく中で、どうなるのかはわからない。
 とりあえず今は通院を辛抱強く続けていくことだ。

 いつもより少し遅い時間に起き出して、朝ご飯を食べた。

 近くの幼稚園から、先生と園児の会話がよく聞こえる。
 たまにうるさいと言う人がいるようだけれど、私には心地いい声だった。
 声高に発せられる挨拶や、泣き声、笑い声が、一日の始まりを告げる。

 「本日は、一日中、晴れていることでしょう。
 この季節に、珍しい、気温の上がる日になる予報です。
 季節の変わり目ですので、体調にもお気を付けください」

 テレビから流れるアナウンサーの声が、耳を刺激した。
 太陽の光が、ベランダから降り注いだ。
 確かに、今日は暑い日になりそうだ。

 髪をセットして、ある程度の化粧をして、迷いに迷って薄手の長袖を着た。

 玄関ドアの目の前に止めてある自転車に乗り、駅まで急いだ。
 のんびりしていたら、少し時間が押してしまった。

 「まもなく、列車が到着します。
 危険ですので、白線より内側でお待ちくださいますよう、お願いいたします」

 到着した直後にちょうど、アナウンスの声が聞こえた。すぐ近くから電車の音が聞こえる。
 足早に駅へ向かった。

 電車が到着し、まばらな乗客が降車して、私とともに数人が乗車した。

 この時間だからか、席は空いていた。
 手近な席に着き、イヤホンを着けた。
 大好きな音楽が流れだす。
 病院は嫌だけど、電車に乗ることなんてめったにないので、旅をしているようでわくわくするのも事実だ。

 しばらく電車に揺られていると、目的の駅に着いた。
 ドアが開くのを待ち、開いた途端、降りた。

 そのときだった。
 見覚えのある顔を視界の端が捉えた。

 わりと人の出入りが多い駅だから、すぐに人混みにのまれてしまう。

 思わず振り返り、姿を探した。
 彼も振り返ったようで、今度は確実に顔を見た。

 目が合った気がした。
 お互いに気が付いている。
 いや、気が付いていると信じたい。

 また、会えた。
 一筋の希望が、私の人生に降り注いだ。

 「想來くん」

 思わず、その名前が口を突いて出た。