エンドロール

 涼風さんの引っ越し予定日が来週に迫ったある日。

 今日は、久しぶりに家から出ない休日で、お昼まで寝ていた。

 母はすでに仕事に出向き、家の中はしんとしている。
 リビングに射し込む光が、夏の気配を含んでいた。

 なんだか外に出たくなって、玄関のドアを開けた。
 暖かい白昼の空気が頬を撫でた。
 一年ぶりの夏到来に思わず頬が緩む。

 ふと、視界の端に入ったポストに、何かが差し込まれているのが見えた。
 何かの便りだろうか。

 『想來くんへ』

 引っ張り出した封書には綺麗な文字でそう書かれていた。

 驚きと不安で、破ってしまうほどの勢いで、封を開けた。

 連ねられた言葉に目を通す。

 衝撃が走り、鼓動が速まった。

 そうか、今日は七夕なのか。
 そんな的外れな感想をもった。

 僕は、追いかけることもできず、その場に立ち尽くすだけだった。

 僕たちの青春はこんなにもあっけなく終わってしまった。


 晩夏光が図書室の窓から射している。

 いつも思う。
 本が日焼けしてしまうと。
 カーテンくらい閉めればいいのに。

 そんなことを思いながら、涼風さんを待つ。
 もう、来ないのに。
 彼女は、また、去っていってしまったのに。

 僕は、淡い期待を抱きながら待っている。

 今日もまた、彼女の笑顔を思い浮かべながら彼女をここで待っている。